お菓子づくりを科学的に解説

お菓子作りを始める方たちへ今さら聞けないお菓子の基礎知識を科学的に解説!

デンプンの糊化(α化)と老化(β化)とは?

よく、焼き立てのふっくらもっちりしたパンが2~3日放置するとパサパサした食感になります、ほかにも食べ終わったお茶碗に残った米粒がカチカチに硬くなりますよね なぜこのような口当たりの変化が起こるのでしょうか?これらの変化の原理を説明していきます

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デンプンの糊化(α化)?老化(β化)?とは

上記の物性の変化の正体は、パンや米に含まれるデンプンに水が加えられ+加熱されると状態変化によって引き起こされる現象になります

焼きたてパン・炊きたてごはんは、含まれるデンプンが糊化(α化)した状態になります。糊化(α化)したデンプンは、ふっくらもっちりした状態になります 逆に、老化(β化)した状態になると、パンはパサパサでごはんはカチカチな状態のことを指します

デンプンの糊化(α化)老化(β化)モデル

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図1. 小麦粉 α化・β化 モデル



 

生デンプン

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小麦粉のデンプンには直鎖上の「アミロース」と、分枝状の「アミロペクチン」の2種類が生の状態だとデンプン粒の中に隙間なくきっちり詰め込まれていて、硬い結晶構造を作っています。

糊化(α化)デンプン

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生デンプンに水を加えて、加熱すると(パン生地をオーブンで焼く、炊飯器で炊く)熱エネルギー(60℃くらいから)によってアミロペクチンの構造が緩み、その隙間に水の分子が入り込んで大きく膨張します。アミロペクチンが膨張すると同時にデンプン粒も大きく膨潤し直鎖上のアミロースがデンプン粒の外側に流れ出ます。このように水を吸収して軟らかく消化の良い状態になることを、デンプンの糊化(α化)と呼びます。

老化(β化)デンプン

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しかし、パンを放置しておくと硬くパサパサした状態に変化してきます。それは糊化(α化)したアミロペクチンが徐々に水分を放出していくことで硬い結晶構造に戻るためです。また、アミロースにおいてもデンプン粒の外側で硬いゲル状に変化します。このように生デンプンの状態に戻ろうとすることをデンプンの老化(β化)と言います。なお、デンプンの老化は水分の含有量が30~60%で温度が0~6℃付近で進んでいきますので、食パンなどの保管方法は冷蔵庫ではなく、冷凍庫で急速に水分を凍らせることで解凍したときに軟らかさを長く保つことができます。冷凍ご飯についても同様で完全に冷ました後に冷凍庫に入れるよりも、あったかいうちに冷凍庫に入れることでもっちりしたご飯を味わうことができます!

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表1.アミロースとアミロペクチンの物性


結論

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パンやお米が硬くパサパサになってしまう理由は、デンプンに含まれる水分が離水・乾燥してしまい老化(β化)してしまうことが原因です。つまり離水してしまう前にデンプンに含まれる水分を冷凍することで糊化(α化)を長く保つことができます。食パンやご飯などは、冷めて水分が飛んでしまう前に急速冷凍して冷凍庫で保存するとおいしさを長く保つことができます!パンやご飯を作りすぎたときにはこの内容を思い出して無駄のないパン作りを楽しみましょう!